『山ぎは少し明かりて』辻堂ゆめ 読みました。

『山ぎは少し明かりて』辻堂ゆめ 読みました。

親子3代の話です。
一番古い「佳代」を起点とすると
「佳代」の娘「雅枝」
その子供「都」となります。

少しネタバレです。
話は現代に近い「都」から
最初が「都」の話で
理想を追いかけて留学したけれどもうまくいかなかった状態から
引きこもり状態に。その後、彼氏の家が台風被害にあったことがきっかけで外に出れることに。
彼氏とのコミュニケーションがうまくいったところがよかったなと思う章でした。
母親、父親とコミュニケーションがうまくいっている家庭ではなく、
母親と祖母の関係性も不思議に思いながら過ごしていましたがだんだんその理由が読み進めるとわかります。

次が「雅枝」
がむしゃらに家の大黒柱として働く人。
そして、なぜそんな風に思うようになったのかが明かされていきます。
そして、彼女もこの本のテーマ、ダム建設の被害を大きく受けている女性なんだなと。
両親は、子供よりダムのこと、そして彼女の母親が女性としては夫のことを一番に考えており
それはそれですばらしい関係性だけれども、子供の立場からすると全くかまってもらえないのは不憫です。
そのため、雅枝がどういう立場を学校で強いられているかを考えてもらえなかったことから
両親とは断絶するまでの縁になってしまい。彼女もかわいそうな人だなと思います。

両親とうまくいっていない経験から自分の家庭もあまりいいコミュニケーションが娘と取れていない感じもあります。
また、両親との縁を切ってまで手に入れたこの暮らしが間違っていないと見返すみたいな方向で思考が進んでしまって
いるのも大変でかわいそうだなと思いました。
しかし、最後のほうになって仕事を引退する直前に父親のことを振り返る時間もあり
人として過去を振り返る、心に余裕が持てるようになり、
夫との関係性も改善しそうで明るい兆しが見えるところがよかったです。

そして最終章「佳代」となります。
戦争を経験した世代で、かなり貧しい時代や大変な時代を生きてきた経験からとても強い心の持ち主です。
そして夫「孝光」との絆が素晴らしく、素敵です。
「孝光」も自分のふるさとがダムに沈む街であるべきではないという思いのある素晴らしい男性ですが、
そういった男性についていくのはやはり大変なんだなと。
志を決めた人と一緒に進む場合、身近な人間は苦労を強いられるなと感じました。

そして、佳代は夫への思いが強く、娘のことを気遣ってあげる観点が少し低いため、
私の感覚では、母親としては、ちょっとと言わざるを得ないですが、
今とは時代が異なり、戦争時代をともに生き抜いてきた夫との絆は想像できずなところもあります。。

娘に対しては、最後にちゃんと関心を寄せられていなかったことを自覚しており
手紙を残すところが哀しく切ないです。
女性としては、夫を一途に愛し、愛された生涯を送った女性だと思います。

どの世代の女性も、結局はダムの建設により
翻弄された女性、家族の話でした。

このお話の舞台、背景は有名な黒部ダムではないようですが、
いつかいってみたいと思っていましたが
そのダムの建設の裏には、こういう家族の話があるのかもしれない。
大切な故郷を失った人がいるということが強く心に刻まれました。

本、特に実用書ではない小説を読むと、
いつもは思いを馳せないことに思いを馳せることができ
世界が広がる感覚がやはり読書の楽しみだなと思わせてくれるすばらしい本でした。


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